予測市場は金融か賭博か NY州とKalshiが全面対立
ニューヨーク州がKalshiを無許可賭博運営の疑いで提訴。スポーツイベント契約は金融商品か賭博か。360億ドル規模の請求可能性とCFTCを巡る規制対立を解説します。
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概要:CFDブローカー大手IGが、米予測市場3位のUnderdogを最大13億ドルで買収へ。1,100万口座を取り込む狙い、3種類のライセンス、買収条件と投資リスクを解説します。
IG.jpg" title="cover-IG.jpg">英国のオンライン取引大手IGグループが、米国のスポーツファンを金融取引へつなぐ大きな一手に出ました。
同社は、デイリーファンタジースポーツと予測市場を展開するUnderdog Sports Holdingsを、最大13億ドルで買収することで合意しました。
スポーツ予測で獲得した若い利用者を、株式、暗号資産、オプション、先物、デリバティブへとつなぐ顧客導線を構築することが、IGの狙いです。

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IGグループの発表によると、買収時の企業価値は約11億ドルです。さらに、Underdogの2026年の業績に応じて、売却株主へ最大2億ドルの追加対価が支払われます。
追加対価は、2026年のネットゲーミング収益が5億3,300万~6億ドルの範囲に達し、かつ同年のEBITDAが黒字となることが条件です。
買収完了時の株式価値は約9億6,300万ドルになる見込みです。IGは次の方法で支払います。
新たに発行する株式は、買収完了後のIG発行済み株式の約6.8%に相当します。買収対価の約60%を株式、残りを現金で賄う構成です。
さらに、売却株主への買収対価とは別に、Underdogの対象従業員向けとして、最大8億5,000万ドルの経営陣インセンティブ制度が設けられます。
2028年分はEBITDAが1億4,000万~4億ドルの範囲で増加するのに応じて支給額が拡大し、最大3億5,000万ドルとなります。2029年分は最大5億ドルです。最大額の支給には、2028年に4億ドル、2029年に7億ドル以上のEBITDAを達成する必要があります。
したがって、買収対価と従業員報酬を合わせた潜在的な支払いは最大21億5,000万ドルに達します。ただし、8億5,000万ドルは買収価格ではなく、将来の大幅な業績拡大を条件とした報酬です。全額支払いが決まっているわけではありません。
Underdogは2020年に設立され、米国のデイリーファンタジースポーツ市場で急成長してきました。収益ベースでは、PrizePicksに次ぐ全米第2位のDFS事業者とされています。
DFSとは、実在するプロスポーツ選手を組み合わせて仮想チームを作り、その選手の実際の成績に応じて順位や報酬が決まるサービスです。
Underdogでは、主に次の2種類を提供しています。
例えば、NBA選手の得点が27.5点を上回るか、NFL選手のパス記録が275.5ヤードを超えるかといった複数の予測を組み合わせます。通常は1日または週末単位で結果が確定するため、短時間で参加できる点が特徴です。
Underdogは約5年間で、1,100万件を超える登録口座と500万人以上の入金経験者を獲得しました。月間アクティブユーザーは平均約100万人に達しています。
米国では、DFSは伝統的にスポーツベッティングとは異なる「技能を競うゲーム」として扱われてきました。
ただし、規制は州ごとに異なります。Pick'em型では、複数チームの複数選手を組み合わせる必要があり、単一の試合結果や選手だけを対象にした予測が認められない場合があります。
こうした制限は、Underdogが提供できる商品の種類と対象地域を狭める要因となっていました。
そこで同社が成長分野として選んだのが、米商品先物取引委員会(CFTC)の監督下で取引されるイベント契約、いわゆる「予測市場」です。
予測市場では、スポーツ、経済指標、暗号資産、政治など、将来の出来事が発生するかどうかを示すイベント契約を取引します。
Underdogは2025年9月、外部の取引所を利用して限定的な予測市場サービスを開始しました。その後、対象を30州まで拡大し、複数の予測を組み合わせる商品を導入したほか、Kalshiの取引基盤へ移行しました。
予測市場とDFSを組み合わせた取引を含めた米国規制下の想定取引量では、Kalshi、Robinhoodに次ぐ第3位まで浮上しています。
IGの公表資料によると、予測市場関連商品は2026年上半期にUnderdogの取扱高の54%を占めました。同社は2026年第1四半期にEBITDA黒字へ転換し、第2四半期のEBITDAは約4,600万ドルに達しています。
さらに2026年7月には、自社の予測市場取引所を立ち上げました。これにより、外部取引所への依存を抑え、商品開発から取引、清算までを自社グループ内で管理しやすくなります。
今回の買収で重要なのは、Underdogの顧客口座だけではありません。IGは予測市場の取引全体をカバーする、次のライセンスとインフラも獲得します。
ブローカー、取引所、清算機関の機能を一体で保有することで、取引の各段階から収益を得られる可能性があります。また、将来的には米国内のパーペチュアル先物市場へ参入する選択肢も広がります。
IGはすでに米国でtastytradeを展開しています。Underdogの取引・清算インフラをtastytradeと共有できれば、商品開発や規制対応、資本効率の改善につながる可能性があります。
米国には、スポーツベッティングまたはDFSを利用する消費者が5,000万人以上いるとされています。IGは、この利用者層を将来のアクティブトレーダー候補とみています。
IGが示した顧客データでは、Underdog利用者の58%以上に個別株の取引経験があり、46%に暗号資産の取引経験があります。
一方で、オプション・先物取引を行う人の44%がスポーツ予測市場、63%がオンラインスポーツベッティングにも参加しているとされます。
つまり、両社の利用者層には一定の重なりがあります。IGはUnderdogでスポーツや予測市場に触れた利用者を、米国ではtastytrade、海外ではIGの金融取引プラットフォームへつなげたい考えです。
ただし、スポーツファンがそのままFX、CFD、オプションの継続利用者になるとは限りません。この顧客転換が実際に進むかどうかが、買収効果を左右する重要なポイントになります。
買収完了後、IGは米国事業の収益が2倍以上になり、米国の月間アクティブ顧客が10倍超に増えると見込んでいます。
IGとUnderdogの2025年実績を単純合算した場合、グループ収益に占める米国の割合は、従来の22%から約40%へ上昇します。
予測市場とDFSは、統合後の純取引収益の約25%を占める計算です。FXやCFDなど特定の商品や市場環境への依存を減らす効果も期待されています。
Underdogの2026年6月までの12カ月間の純収益は約4億6,600万ドルで、前年同期の3億8,000万ドルから21%増加しました。2026年第2四半期の純収益は約1億2,200万ドル、EBITDAは約4,600万ドルです。
11億ドルの買収時企業価値は、直近12カ月の純収益の約2.4倍に相当します。
買収後もUnderdogのブランド、プラットフォーム、経営陣は維持され、独立した事業として運営される予定です。
共同創業者兼CEOのJeremy Levine氏は引き続き経営を担い、IGグループのBreon Corcoran CEOへ直接報告します。
Levine氏は過去にDRAFTとStarStreetを創業し、いずれも他社への売却を経験しています。共同創業者兼最高製品責任者のBrandon Stakenborg氏も経営に残ります。
Corcoran氏は、Paddy Power BetfairがDRAFTを買収した当時のCEOであり、Underdogの初期投資家でもあります。両社の経営陣には以前から関係があり、IGはその点も統合リスクを抑える材料とみています。
創業者2人は、買収後のIG発行済み株式の約1.5%を受け取る予定です。ただし、株式には一定期間の保有制限が設けられ、買収完了から24カ月かけて段階的に解除されます。
IGは買収資金とUnderdogの債務返済に備え、Barclays BankとGoldman Sachs Internationalから最大9億5,000万ドルのブリッジローン枠を確保しました。
買収後の総負債倍率は、2026年末時点で2倍未満になる見通しです。IGは投資適格格付けの維持を掲げていますが、財務余力を確保するため、自社株買いを一時停止しました。
自社株買いは、持株会社の所在地変更、株価、資本需要などを確認したうえで、2027年に再開できる体制を整える方針です。配当方針に変更はないとしています。
買収による調整後1株利益への効果は、初年度にはおおむね中立、3年目までに2桁%の押し上げとなる見通しです。3年目には、投下資本利益率が加重平均資本コストを上回ることを目標としています。
IGが13億ドルを投じて獲得しようとしているのは、予測市場の収益だけではありません。
1,100万件の登録口座、若いモバイル利用者、スポーツ分野のブランド、自社取引所、ブローカーから清算までをカバーするライセンス体制をまとめて取り込み、金融取引へ誘導する入口を広げる戦略です。
一方で、買収額の大きさ、新株発行による希薄化、借入負担、州・連邦レベルでの規制対応、スポーツ利用者を金融取引へ転換できるかという不確実性も残ります。
買収は米国当局の承認や反トラスト法に基づく審査などを条件としており、完了は2026年後半から2027年初めになる見込みです。IGが予測市場を新たな成長軸にできるかは、Underdogの利用者数だけでなく、規制対応と顧客転換の実績によって判断されることになります。
一方、今回の発表では、日本向けの予測市場サービスを開始する計画は明らかにされていません。米国で取得したFCM、DCM、DCOのライセンスが、日本居住者向けサービスの適法性や投資家保護を保証するものでもありません。
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